がん臨床研究の適切な推進に関する声明文(全文引用)

論評抜きで全文引用します(以下)
出典:http://pancreatic.cocolog-nifty.com/Upfile/kyoudou.pdf
※この文章はワープロか新聞用の濁音などの文字処理で書かれているためコピペすると文字化けする場合がありますので、御留意ください。
【前段の経緯説明】
朝日新聞臨床試験中のがん治療ワクチン」記事について

         2010年10月20日 東京大学医科学研究所所長 清木元治

国民の2人に1人が、がんになる時代となり、有効な予防法や治療法の確立は、研究者や医療者にとって、ますます重要な任務になっている。また、治療法の開発に欠かせない臨床試験や治験は、がん患者様の尊い意思と医療者への信頼があってこそ、はじめて成り立つものであり、東京大学医科学研究所では、基礎研究の成果を新たな治療法の開発につなげるために、日夜、研究者や医療者が努力している。

2010年10月15日付朝日新聞の1面では、当研究所で開発した「がんワクチン」に関して附属病院で行った臨床試験中、2008年、膵臓がんの患者様に起きた消化管出血について、「『重篤な有害事象』と院内で報告されたのに、医科研が同種のペプチドを提供する他の病院に知らせていなかった」と報じられ、臨床試験の実施体制やその背景に様々な疑問を抱かせる記事となっている。

しかしながら、この記事には、多数の誤りが見られる。まず、この消化管出血は、すい臓がんの進行によるものと判断されており、適切な治療を受けて消化管出血は治癒している。また、附属病院で実施された臨床試験は、単施設で実施したものであり、他の大学病院等の臨床研究とは、ワクチンの種類、投与回数が異なっている。さらに、最も基本的な、ワクチン開発者の名称が異なっている。より詳しくは、『臨床試験中のがん治療ワクチン」に関する記事について(患者様へのご説明)』をご覧いただきたい。

この記事が出されて以降、本学には「がんワクチンで消化管出血するのでしょうか?」という問い合わせが相次いでいる。また、標準治療を断念せざるを得なくなった患者様からは、「これで臨床試験が停止するのではないか」という心配の声も頂いている。このような記事を目にして不安を抱かれた、全国の患者様の動揺を心から憂える。

そして、この記事は、日本の医療の発展のために、これまで真摯に臨床試験に取り組んできた、全国の医師、看護師、臨床試験コーディネーターらを大いに落胆させていることも気がかりである。この記事は、先端医療の発展を踏みにじるものである。

医科学研究所は2010年2月の取材依頼以降、副所長名で1度、所長名で2度、質問に対する真摯な回答を適宜行ってきた。その取材過程のなかで、記事のなかで述べられている誤りについても、既に根拠を示して回答してきている。にもかかわらず、このような記事を、社内でいくつものチェックをすり抜けてトップニュースとして掲載する朝日新聞社の見識には、大いに不信を抱かざるを得ない。

果たして、この記事はいったいどのような目的で書かれたものであろうか? 

朝日新聞社は、このような記事を掲載するに至った経緯や責任を明らかにするべきだと考える。

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がん臨床研究の適切な推進に関する声明文
平成22年10月20日
がん患者団体有志一同
「がん患者は、がんの進行や再発の不安、先のことが考えられない辛さなどと向き合いながら、 新たな治療法の開発に期待を寄せつつ、一日一日を大切に生きています」。2007 年に胸腺がんで亡 くなった故山本孝史参議院議員は、参議院本会議にてこう演説しました。日本では二人に一人がが んを発症し、三人に一人ががんで亡くなるといわれる中で、新たな治療法や治療薬の開発は、多く のがん患者にとって大きな願いです。
新たな治療法や治療薬の開発のためには、基礎研究から始まり、がん患者さんを対象にした治験 や臨床試験など、長い研究過程が不可欠です。特に、がんの患者さんを対象にした臨床研究は、が んの治療成績の向上と治療の安全性の確認のために、重要な役割を担っています。現在のがん治療 成績の向上は、多額のがん研究予算と、多くの研究者や医療者による尽力、そして臨床試験への多 くのがん患者さんの尊い参画によって得られています。
治験や臨床試験では、一定のリスクがあることも忘れてはなりません。がん患者さんが参画する 治験や臨床試験において、被験者の保護には十分すぎるほどの配慮が不可欠です。一方で、治験や 臨床試験のリスクについては、正しい理解と適切な検証が必要であり、不確かな情報や不十分な検 証に基づいて、治験や臨床試験のリスクが評価されるべきではありません。特に、東京大学医科学 研究所の臨床研究に関する報道を受けて、当該臨床研究のみならず、他のがん臨床研究の停止とい う事態が生じました。がん臨床研究の停滞が生じることを強く憂慮します。
私たちは、がん患者の命を救うがん臨床研究の適切な推進に向けて、以下の声明を表明いたしま す。

  • がん患者の命を救うがん臨床研究が、適切に推進されるとともに、その推進にあたって必要 な国のがん研究予算が、根拠とオープンな議論に基づいて拡充されることを求めます。
  • がん臨床研究の推進にあたっては、臨床研究に参画する被験者の保護が、十分に行われるこ と、被験者の保護については、情報が広く開示されるとともに、事実と客観性に基づいて、 専門家によるオープンな議論と検証が行われることを求めます
  • 臨床試験による有害事象などの報道に関しては、がん患者も含む一般国民の視点を考え、誤 解を与えるような不適切な報道ではなく、事実をわかりやすく伝えるよう、冷静な報道を求 めます。

以上
(※)なお、本声明の発表にあたっては、厚生労働記者クラブにおける記者会見を 10 月 18 日に要請し たところ、記者クラブの当番社より「協議の末、お受けできない」との回答を得たことを申し添えます。
【有志患者会一覧】(50 音順) GIST・肉腫患者と家族の会「GISTERS.net」 特定非営利活動法人HOPEプロジェクト 秋田にホスピスを増やす会
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※以上 41 団体」