「コミュニケーション支援」について考える

「コミュニケーション支援」という言葉には、さまざまな含意があるらしい。またそのアクロニムにも精通しておかねばならない、例えばAT(支援技術)やAAC(拡大代替コミュニケーション)、ICT(情報コミュニケーション技術)である。通常の言語感覚をもつ人だと、コミュニケーション支援とは「ふつうならコミュニケーションができない状況や属性をもつ主体のあいだに、ある種の人間や技術製品が介在することでコミュニケーションを可能にすること」という実践のことを指しているように考えられる。
冷静に考えると、この定義は「コミュニケーションができない状況」が、初期条件として与えられており、その状況を克服するための[人間の]技法や[製品がもつ]技術によりそれがひろく「コミュニケーション支援」(communication assistance)と呼ばれるようになったものと推測することができる。
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独立行政法人国立特別支援教育総合研究所「重度・重複障害のある子どものコミュニケーション支援
コミュニケーションにおいては、これまでにも様々な考え方が紹介されてきている。多くは、なんらかの言語活動を媒介としたものであるが、重度・重複障害のある場合、通常言われている意味での音声言語によるコミュニケーションが困難であることが少なくない。そこで、音声言語にこだわらず、より広い観点からの言語行動を視野にいれた定義が必要とされる。……この「言語行動以外の」方法によるコミュニケーションを、どのように育てていくかが、重度・重複障害のある子どもの教育において大切な課題となる」(上掲リンクによる)
ちなみにサイト情報によるとこの情報が入っているページのカテゴリー階層は次のとおりである「トップページ >障害のある子どもの教育について学ぶ >重複障害教育 >重度・重複障害のある子どものコミュニケーション支援 」
この文脈では「特別支援教育におけるコミュニケーション支援」編集委員会 (著) 『特別支援教育におけるコミュニケーション支援―AACから情報教育まで』(2005年)なる書籍が発刊されている。
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障害者向けの[レイディメイド]カスタマイズされた製品を売る企業は次のように「コミュニケーション支援」を表現する。
「障害者のためのコミュニケーション支援」:「障害をお持ちの方のコミュニケーションは非常に難しい面があります。アルファテックでは、一人ひとりの症状にに合わせた機器やスイッチのカスタマイズをして、コミュニケーション活動がスムースに行えるよう支援いたします」(→出典
この用語法は奇異な感じがするが、じつは経済産業省が「コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則(JIS T0103)」という工業製品に関する規格のガイドラインを作成するときに、こういうネーミングをしているので、企業は堂々と「コミュニケーション支援」をやっていますと言うことができるのである。(財団法人共用推進機構「「コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則(JIS T0103)」」)
コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則」規格に関する参考情報/ 1. 文字や話し言葉によるコミュニケーションの困難な人が、自分の意思や要求を相手に的確に伝え、正しく理解してもらうことを支援するための絵記号に関する規格です。/2. 規格では、絵記号を描く際の基本形状(線と面での表現、物を正面、真横、斜め方向からとらえた表現等)、作図原則(既存の絵記号との整合性、主題の明確化等)を規定し、描きやすく、伝えたい内容が理解されやすい絵記号を描くためのルールを示しています。/3. 規格に掲載されている絵記号は、日本PIC研究会が、知的障害の方々のコミュニケーション支援を目的として作成収集していたものを参考にしています。/4. 絵記号はコミュニケーションを支援する手段の一つであり、情報の伝達能力が高く、日常生活におけるコミュニケーションのバリアを低くするものとして期待されます。また、言語に拠らないため、今後世界各国で共通に使用できる可能性もあります。/ 5. 「コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則」(JIS T0103)の規格本文は、財団法人日本規格協会(JSA)より購入することができます。/JSA Web Store http://www.webstore.jsa.or.jp/webstore/top/index.jsp/6. 規格の絵記号作成に関しては、経済産業省が絵記号作成者、財団法人日本規格協会が規格作成機関としての権利を有しています。
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また、ある財団は、[通常すなわち常人による]言語的コミュニケーションにハンディのあるひとたちのコミュニケーション支援のための「技術」開発のことを「コミュニケーション支援」と呼んでいる。
話し言葉によるコミュニケーションのバリアフリーを目的とする「コミュニケーション支援ボード」の啓発普及活動は、2003年に当財団と全国特別支援学校知的障害教育校長会(元全国知的障害養護学校長会)が主催し、東京IEP研究会制作の「コミュニケーション支援ボード」に始まり、その後6年間にわたり地方公共団体や関係機関などと協働作業を進めてきたものです。身近な存在として利用頻度の高い交番やパトカーに配置された警察版のほかに、鉄道駅用、救急用、コンビニ用、災害時用などカスタマイズされた支援ボードの開発と普及を積み重ねてきましたが、「警察版コミュニケーション支援ボード」の活用状況の調査結果から、障害者だけでなく外国人、高齢者、幼児などにも幅広く利用されていることが明らかになっています」(明治安田こころの健康財団「コミュニケーション支援」→出典