薔薇の消しゴム十字軍

サントドミンゴの想い出】
もう10数年前、サントドミンゴドミニカ共和国国立図書館の片隅でノートを取っていたら、中年の職員がツカツカ(ハイヒールの音)とやってきて「ちょっと、あなたボールペンでノートを取るのはやめなさい。図書館では鉛筆でノートをとりなさい」と説諭されました。「私しゃ、文明国から来た日本人だから、本にボールペンで書き込むことはしませんよ」と言いながらノートへの筆記を続けると、彼女は数分後にボールペンの引き線で真っ黒になった図書館の本を持ってきて私の目の前に置くと「これでもですか?」と見せつけました。「その不逞の輩と私とどういう関係があるのか?」と私は毒づき、やたらでかいコンクリートの建物の割には蔵書が貧弱な図書館を後にしました。その後、サントドミンゴ大学の購買部で、ペールで禁書扱いされている(薄気味の悪い暗殺で名を馳せたテロ集団)センデロルミノーソの政治教書を購入したことを今でも憶えています。
【シャペロン】
「シャペロン(chaperon または chaperone)とは元来、若い女性が社交界にデビューする際に付き添う年上の女性を意味し、タンパク質が正常な構造・機能を獲得するのをデビューになぞらえた命名である」(ウィキ日本語版)。このような語法により、本物のシャペロンは怒るだろうか?_私は怒らないと思う。なぜなら、よい理由でシャペロンが隠喩として使われているからである。関連するリンク
2月末より、私ども職場がBBBキャンパスに移転し、ようやく総合図書館をゆっくり利用できる機会ができました。
そこで、たいへん気になることがありますので、しかるべく部署の方)にこのメールを転送してください。

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さて学習用図書の本を借りて読む機会が増えますと、当然、図書への書き込み(多くは鉛筆ですが)多く見受けられます。たぶん、大学図書館サブカルチャーになっているかもしれませんが、結局のところ、こういうダメージが、書籍の廃棄や、買わなくてもよい名著の再版本の購入という余計な予算に繋がってゆくと思うとやはり静観視できません。
お借りした本を、ページをめくるたびに消しゴムで消すのもはなはだ疲れます。また名著の場合、頓珍漢な箇所に線を引く馬鹿野郎の痕跡を見ると、腹が立つ前にその不憫な知的レベルに同情したりします。

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新学期ですので、是非とも、図書館の利用方法というガイダンス以前に、「文明の利器としての図書館リテラシー」教育をやっていただき、図書館を昼寝の場所ではないことを学生に啓蒙してやってください。
書き込みを減らすためには、図書館を有効活用する優等生を産出し「消しゴム十字軍」を増やすしか方法はありません。

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また人文社会系地区の図書館としては、稀覯本の収集展示などなど、まだまだノーブルさに欠ける部分があります。初学者への一般教育や、図書で仕事をする研究科――本学に勤めて数年ですが図書館利用リテラシーのレベルが低い教員が多いように思われます――の協力も必要です。我々の教員にもできることを、是非とも積極的にご提案ください。
というわけで、気になることをお伝えしました。どうかよろしく。

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ご丁寧な返事どうもありがとうございました。
洋古書のセミナーは関心がありますので開催されるのであれば是非とも教えてください。
いま手元にウィルコックス『古書修復の愉しみ』とマングェル『図書館:愛書家の楽園』そしてウッダル『ボルヘス伝』(すべて白水社!)があります。これもなにかの縁でしょう。
垂水源之介 拝