ネオリベラル経済、常勝の論理とは?

西村和雄『複雑系経済学とは何か』より「 実際、経済学者には、数学や工学から転向してきた人が数多くおります。歴史的にも、イギリス人で 20世紀初頭を代表する数学者兼哲学者であるラムゼー(1903―30)は、現在の経済動学の基礎をなす論文を書き、それがエコノミック・ジャーナルに掲載されています。やはり、20世紀を代表する数学者フォン・ノイマン(1903―57)は、経済学者モルゲンシュタイン(1902―77)と共にゲームの理論を開発していますが、同時に、経済成長の多部門モデルにおける斉一成長経路の存在証明の論文を書いて、その後の経済学に大きな影響を与えています。/1970年代には、カリフォルニア大学バークレー校の数学者スメールが数理経済学の研究をして、論文を幾つも発表しています。/このように、数学者が経済学に大きな影響を与えたのは、均衡概念をより精密にすることによって、新古典派理論を更に発展させたからです。ゲームの理論を別にすれば、新古典派理論に代わるものを提示したのではないのです。/経済学は、このように数理科学として発展してきましたが、単に数学を応用しているだけではありません。経済学での必要性から新しい数学の分野が生まれてもいます。非線形の方程式の解が非負となるための条件は、非線形計画法として経済学者によって発展させられています。フォン・ノイマンの経済成長の論文では、1点を集合に写す写像に関する、いわゆる対応の不動点定理を証明する必要が生じ、フォン・ノイマンは、関数についてのブロウァーの不動点定理を使って、不動点の存在を証明しました。これについては、後に日本人の数学者である角谷静夫が別証明を与え、その後は、角谷の不動点定理とよばれています。また、均衡マクロ経済動学で用いられる無限の将来までの最適制御問題は、経済学特有のものです。工学などでは、有限期間の最適制御問題しか扱っていないので、経済学で得られた数学的結果は、数学としても新しいというものが多いのです」(www.iic.tuis.ac.jp/edoc/journal/ron/r2-3-3/r2-3-3a.html)。