元独裁者の口を噤ませること

J.S.バッハ マタイ受難曲 BWV244 [DVD]イラクフセイン元大統領の死刑判決が26日に確定し、イラク北東部ハラブジャでの化学兵器によるクルド人虐殺「ハラブジャ事件」(88年)など旧フセイン政権時代の歴史の暗部が解明されることなく闇に葬られる可能性が出てきた。旧政権による迫害・弾圧の対象となったクルド人らの間では、元大統領の刑の執行により真相究明の過程が幕引きされる事態に不満の声も出ている。/イラク高等法廷では旧イラク軍が北部クルド人居住区で実施した弾圧作戦「アンファル作戦」(88年)の審理が続いているが、イラク国内法の規定では刑は確定から30日以内に執行されることになっている。死刑が執行された場合、元大統領への公訴は取り下げられる。/同法廷では「アンファル作戦」の証人調べが続いており、次回公判は来年1月8日に予定されている。同法廷のシャヒン裁判長は26日の記者会見で「元大統領の死刑が執行された場合、公判は元大統領を除く6被告で継続される」と述べた。だが、元大統領が独裁者だったことを考慮すると、元大統領本人の証言なしに真相を解明するのは極めて困難とみられる。/クルド人は特に、約18万人の犠牲者が出たとされる「アンファル作戦」と、化学兵器の使用により1日で約5000人が死亡したとされる「ハラブジャ事件」の扱いを注視している。元大統領の犯罪の立証は民族的な悲願とも言え、死刑執行によって真相解明が中途半端な形で終わることへの不満がクルド人の間で募っている。/イラク政府のジバリ外相(クルド人)は26日、中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」で「我々は暗い(歴史の)章を閉じなければいけない。死刑確定によって、国民融和が加速されると信じている」と述べた。同胞であるクルド人の不満に配慮しつつ、元大統領の犯罪を「過去」と位置づけ、現在の宗派間抗争の克服に目を向けるよう呼びかけた形だ」(headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061227-00000020-mai-int)。
殉教の代価